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チシマザクラ海を渡る(2)
 ところで今回モスクワに送られるチシマザクラ72本の内訳は、当社の苗木は樹高1m・枝張0.6mのもの20本、道立林業試験場(当時)よりお預かりした苗木2本、他の生産者の苗木(大きさ不詳)50本です。そのなかで当社の苗木が一番大きく記念植樹行事にふさわしいとされ採用されました。

 これらの苗木は、日露知事会議で、ルシコフ市長がモスクワに桜並木を作りたいと発言したことが発端で、日露友好のシンボルとしてモスクワでも最も有名な観光地のひとつ、モスクワ大学のメインストリートが植樹の場所に選ばれました。

 それだけに業者さんのご苦労と緊張感は肌で感じるくらいに伝わってきました。ロシア特にモスクワに明るい輸出入代理店さんを通し行ったとのことですが、担当部長さんがモスクを訪ねるなどかなり神経を使ったそうです。「絶対枯らすことはできない」のです。実務レベルでは代理店さんにお任せですが、植物のこと技術的なことは業者さん側で検討しなければなりません。

 寒冷地それも日本では考えられない寒さのモスクワです。いくら耐寒性があるといっても根洗いされた苗を植樹行事までいかに良い状態で保持するかが大切で、植え付け後の管理についてもいい加減なことをしては健全な成育が見込めません。したがって本州に発送し手元を離れたからといって、責任を果たしたと言わんばかりのモノ売り業者では通用しないのです。

 箱根植木さんは技術レベルの高い業者さんですが寒冷地には不慣れということでしたので、今までの経験、知識を活かし、少しでもお役に立てればと資料の提出、微力ながら情報の収集に努めました。まず基本となるモスクワの月平均気温でもと思い、調べたところそれがなかなか見つからない。日本国内の気象情報入手がいかに簡単かをあらためて認識した次第。

 やっと探し当てたまではよかったのですがロシア語が読めない。家族の協力を得て地名だけは何とか判別できたので、比較のため札幌、厚真(苗畑のある安平町の隣町)、モスクワの平均気温をプロットすることから始めました。




 このグラフにはユジノサハリンスク(2006年に植樹したサハリンの州都)を表示していませんが、この都市を含め日本では月平均気温が8月が最高となります。それに対してモスクワでは7月。秋は一月早く訪れるようで、それだけ植物の成育期間が短く、活着に必要な最低地温も低いことが予想されます。しかし予想と異なり春先は意外と高めで、今年も札幌より高い気温で推移していたようです。植樹当日に土壌凍結もなく活着に影響なさそうなので少し安心。あとは降水量と最小限の水やり管理でしょうか。



 業者さんとの打ち合わせで、4月後半にモスクワに送るので植樹までの間どのようにしたらよいかを考え、植物に明るく確実な管理をしてくれると思うモスクワ大学の植物園に依頼することになりました。このほか日本特有の根巻き苗のこと、ポット苗の作り方、養生方法、日本では手軽に入手できても果たして現地でできるとは限らない可能性がある資材の調達など多岐にわたって検討。できるだけ幅広い植樹帯の確保、芝生のある場所と聞いていたので、植樹後3年程度は根元に芝が繁茂しないよう隔離することなども要望しました。

 万全を期し輸出まで半月となった3月29日、ロシアを震撼させた地下鉄爆破テロ事件が起こり、事件の悲惨さと同時にチシマザクラのことが脳裏をかすめたのです。「これは大変なことになった。事件以降は検査が厳しくなり、荷物が滞留することになると、この時期の気温からして植物園の保冷庫に入る前に芽吹いてしまう。」経験上、芽吹いてしまうと保冷庫内でも制御できないのです。

 おそらく業者さんは先の代理店さんと綿密な打ち合わせを行っていたと思います。根洗をして国内で植物検疫を受けようとしたころになって、今度はアイスランドの火山噴火(4月18日)でヨーロッパの空港は欠航続出で大混乱。一難去ってまた一難とはまさにこのこと。幸いなことにモスクワは影響の少なかったため早期に閉鎖が解かれので、チシマザクラが日本を離れました。捨てる神あれば拾う神ありで、詳しいことは書きませんが、このサクラはVIP待遇で「通過」したとのことです。担当の方はどれほど喜んだことか伝わってきますね。

 記念植樹の5月3日、モスクワ市長、村山東京都副知事をはじめ日露双方の各知事、北海道から高橋知事も参加され、写真には高橋知事がサハリン州知事と歓談されているところが写っていました。(つづく)


植え穴に置かれた苗に土かけ程度の記念植樹ではなく、
土を掘り、植え穴を開けるところから始めました・・本格的です



高橋知事とおそらくサハリン州のホロシャビン知事(左)


モスクワ到着後にポット養生していたサクラ。ジュートがそのまま残っています



そしてチシマザクラが植樹されました


幅広い植樹帯にしっかりと水ぎめされた幸せ者のチシマザクラ。
景観重視のこの場所でこれだけ広く芝生を切り取るということはあり得ません。
こちらからの要望を聞き入れていただいたようです。
そのことはこのサクラがいかに大切にされるかを物語っています。



記念植樹したイシコフ モスクワ知事の名前が刻まれています
最上段の Аллея Сакураは、「サクラの小径/並木径」といったところでしょうか。


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