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冬囲いと熱収支

 ご当地の寒さに耐られそうもない植物(主に樹木)を何とか屋外で越冬させたいと思う人はプロ・アマ問わずたくさんいらっしゃるかと思います。今まで様々な樹木を様々な方法で越冬を試み、最低でも5年をかけて試験栽培。耐寒性等を確認してから、お客様のところに納品・植え込みをしてきました。昨今ありがちなネット情報程度でいきなり〜は問題があります。

 

 道内の園芸業界では体系づけられた試験・研究は苦手なようで、冬囲いのなかの温度を測定することでさえ皆無に等しい。どちらかといえば経験と勘、思いつきによるピンポイント的手法で行っているのが実情かもしれません。筋道を立てて試験したからと行って必ずしも望む結果が出るとは限りませんが、何事も長いスパンで技術と知識の蓄積が大切かと思います。

 

 無事屋外で越冬させるために、アマチュアの園芸家はしっかりとむしろ等で冬囲いをすれば大丈夫と考えています。一方でプロの園芸家やその方々の講義を聴いたり、園芸雑誌の記事を見た人は、囲いの上部と下部を閉じない方法を採用しています。春先に苗が蒸れると言われているからです。どのような植物がどのような時期に蒸れるのかまだ確認していませんが、常緑樹以外では眉唾(まゆつば)な情報もあるのではと思っています。この話題はそのうちあらためてということで。

 

 さてこの数年間、私なりに基本的な試験・測定を行ってきました。その結果を説明するには、狭い囲いの中を「熱収支」で考えるとわかりやすいとの結論です。少なくとも道内の園芸業界では「熱収支」が注目されたことはありません。典型的な例を図示しますので、参考にしていただければと思います。

 

○△×はあくまでも相対的な評価です

 

 ところでこれまでに関連記事について多くの問い合わせをいただきました。そのなかで一番多かったのは

 

  Q:温度データは囲いを雪で覆って計ったのですか

 

  Α:自然降雪だけの条件下で計測しました。人工的に雪を被せると新たな因子が増えるので避けています。積雪が少ないとき、囲い回りに雪を被せるのは効果がありそうです。しかし春先に融けづらい、被圧による影響も考えながら自己責任でお願いします。

 

 まだまだ条件を探る段階です。ベーシックな試験の積み重ねを怠るのは危険。工業化学分野で例えるとビーカーテストのレベルにもかかわらず、いきなり生産ラインに導入するようなもの。失敗すると担当者の首が飛ぶだけでは済まされません(笑)

 

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何よりの結果ですが・・・

 今年の冬は雪が少なく、該当する地域では耐寒性の乏しい樹木、特にバラは被害が大きいとの話がでています。それを防ぐための囲いについて、これまで最善とされていた囲い方法(1)に執着していたことが、解決を難しくしてきたと思います。すでにご承知とは思いますが、2年ほど前にあるグラフを公開したところ、これを察知した園芸指導家K氏が、某バラ園でそれまで例外なく行っていた囲い方法(1)を今回は弱そうな種類に限って囲い方法(2)に変更したのが見て取れます。

 

囲い上部を密閉した冬囲い(写真上)と囲い上部を開放した従来の冬囲い(写真下)

 

外気温との差がほとんど期待できない冬囲い(2017年3月)

 

 グラフは温度測定により囲いをほぼ密閉することで得られたデータで、外気温と囲い内部の温度(以降、内部温度と略します)との差が予想以上に大きいことがわかりました。耐寒性の乏しい植物では「密閉すること」が最低条件となります。なおデータのばらつきの大部分は測定誤差ではなく、温度以外の因子(ファクター)があること示しています。

 

  

通気性重視の従来型囲い(1)

内部温度をできるだけ高く維持する囲い(2)

 

 囲い(1)の方法では通気性がよすぎて内部温度が思うように維持できません。住宅の屋根・天井に大きな穴があいているのと同じで、寒さに弱い住人には最悪の居住空間です。と言えばわかりやすいですね。これに気づかず小手先の手法では効果が上がらないどころか逆効果になった可能性があります。

 

 なお、積雪の多い地域で少雪厳寒の際に賢明なガーデナーさんが冬囲いまわりに「雪寄せ」「雪かけ」しています。囲い外部を断熱効果の高い雪で覆うことはより効果的なので、このバラ園でも実施したようです。結果よければすべて良し?ともいえますが、積雪の少ない厳寒地ではそうもいきません。どうするか現在検討を重ねているところです。

 

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試行錯誤と検証は一体で

 2017年03月27日付けブログ掲載のこのグラフを見れば「論より証拠」。保温効果を期待できる方法があるかもしれないということなのです。園芸雑誌で「冬囲いはほとんど保温効果はない」(注)と断言した園芸屋さんには、さぞ刺激が強かったでしょうね。しかし何故かご本人から直接の問い合わせなどありません。不思議です。

 (注)従来の冬囲いをしたという条件ではこの通りですが、これですべての冬囲いを語るのは無理があります

 

 

 従来は温度を測定して比較することすら皆無に近いお粗末な状況でした。徹底した品質管理を目指した工業分野と違って、冬囲いの精度はかなりアバウトな世界ですから、効果を左右する要因(因子)を探り出し、余裕を持って目的が達成できる身の丈にあった条件を見つけなければとても実用化できません。「たかが冬囲いされど冬囲い」おおげさに聞こえるかもしれませんがこれも新しい技術開発と考え、様々なことを着実に積み重ね検証していくことが肝要です。こうしたトレーニングにあまり縁のない業界なので、特に若い方には謙虚さを失わず、失敗したときのつまらない言い訳や退路を断ち果敢に挑戦してほしいものです。

 正確なたとえではありませんが「宝くじは買っても当たることは少ないが、買わねば絶対に当たらない」

 


(参考:このブログ内関連記事)
2017.03.27 冬囲いの断熱効果(1)

2017.04.10 冬囲いの断熱効果(2)

2017.12.01 冬囲いの方法と効果

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冬囲いの方法と効果

 今朝までに岩見沢では積雪が50センチを越え、除雪に追われる一日になりそうです。しかし早くに雪で覆われたいバラ園では、とりあえずほっとしているのではないかと思います。今後の積雪推移を見守りたいですね。

 

 ところで昨冬12〜1月は例年にない厳寒(日最低気温が15度以下)と少雪(積雪深が50センチ以下)が続き、耐寒性の乏しい種類のバラはかつてないダメージを受けました。こういう冬は滅多に無いと考えるのが普通ですが、来ないという保証はありません。そこで弱そうなバラ千数百本には手間ひまをかけた冬囲いが施されたようです。

 

種類によってバラを3タイプに分類し、冬囲いの方法を分けたそうです

 

 

 特にメインとなっている渦巻き形花壇にはいかにもバラらしい一般受けする種類がほとんどで、寒さに弱いのが難点とのこと。さて新しく採用された冬囲い方法がどうなのか検証が必要でしょうね。いつになるかわからない昨年のような気象条件を待っている余裕は無いと思うので、例えば該当するいくつかの苗をテストガーデンエリアなどに植えて周囲を強制的に除雪し、いくつかの過酷な環境を作って比較検討することが大切かと思います。

 

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冬囲いの断熱効果(2)

 厳寒期の2日間、ある条件下で外気と囲い内の気温を比較したグラフです。

 

データ、文書の無断引用は固くお断りいたします

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